鳩と平和の関係

『鳩=平和の象徴』という神話

本題は直接トイレットペーパーとは関係ないのですが
個人的にど~しても無視できず こっちに書くことにしました。

まずはこちらのPeaceという商品をご覧ください。

えー。ワタクシ煙草のみではないんですけれども、
目にした瞬間に脳裏をよぎるのは やはり青がバックの アレ
オリーブの枝がトイレットペーパーになったりしていますけれども
garamond っぽいオールドフェイス=セリフ系の書体と言い…。ねぇ。

まぁ、端から疑うのも悪いので、まずは『ハト=平和』の検証から。

ハトはあまり喧嘩をしないせいか、そもそも友愛などの象徴にされがちなんですが
中でも扱いが大きいのはキリスト教で、だいたいこの手の話で引き合いに出されるのは
聖書に書いてあるノアの箱舟という洪水の話であります。
あの中で新天地を真っ先に探し当てたのがハトだということになっていますね。
世界中が水没した中、どんぶらこっこと船旅を余儀なくされたノア御一行様ですが
半年以上ぷかぷかしてるのもアレなので「岸はまだかいな」と思い始めたところ
ハトを飛ばしたら枝を持ってきたので陸が近いと色めきたつのです。
そのとき持ち帰った枝がオリーブだったことから、セットでモチーフにされがち。

そして、それをして鳩が平和の象徴である理由とされるのですが、
どっちかというと『希望』とか『安堵』の要素のほうが大きいんじゃないかと…。
そもそも事の発端は神の裁きなのであるし、そしたら『平和』って変じゃない?
しかも何かくわえてるハトの絵が昔から定番だったかというとそうでもないし。

大洪水の話は、あの分厚い聖書の中の創世記という一番最初の章に収められていて
つまり、イエスが生まれるずっと前には周知されていた話ということになります。
#だから、厳密には『キリスト教』に限らないんですが便宜上わかってください。

しかし、紀元前から伝わる伝統的画題ながら、古い宗教画におけるノアの箱舟は
『洪水におびえる人々』『船の建造』『乗り込む動物たち』が主な内容であって
誰も戻ってきたハトの絵なんか描いちゃいないのです。
あることはあるけど、 イギリスのミレイ (『落穂拾い』とは別人ですよ) のしか知らない。
それも描かれたのは17世紀中盤の話です。ハトもオリーブくわえてないしね。

はと座 ほかにオリーブ&ハトといえば
冬の夜空にはと座ってのがあって
シリウスの右下にいらっしゃいます。
元はおおいぬ座から分離したものなので
目立つ星もなく地味~な感じ。

一応、ノアの箱舟の話とリンクしてますが
星座の中では割と最近制定されたもの。
数千年前から知られてる星座もある中で
300年ほどの歴史しかない若い星座です。

オリーブをくわえてはいるものの、イメージ図は比較的素直なもので
正面を向いて飛ぶという、独特の構図はここでも見られません。

そもそも宗教画でハトが描かれるとしたら キリストの洗礼 とか、そういうネタのときです。
ここで、ようやく左右に翼を広げる鳥の絵に出会うことができました。
中世の絵に多いんですが、このころは宗教的観念から遠近感のない構図が求められ、
正面向いて飛んでる鳥なんて このころの作品以外あんまり知りません。
しかも、この場合のハトは神の使いであって平和の使者でないのもポイント。

では現在あたりまえに認知されている『ハト=平和』の概念は誰が作ったのか!?
直接的にはパブロ(なんたらかんたら)ピカソだと言って良いでしょう。
世界平和擁護会議のポスターにハトを描いて 爆発的に認知されることとなりました。
ちなみに絵画好きの間ではピカソがハトの絵を好んで描いたのは良く知るところで
そもそもお父さんからしてハトの絵にこだわりを持っていたし、
さらには娘さんの名前もハト (Paloma) ってつけちゃうし、なんとなくハト一家。

ともかく、聖書のイメージとあいまって戦後の平和希求ムードにばっちり噛みあった
『ハト=平和』は、会議の2年後にタバコのデザインを頼まれることとなった
工業デザイナーのレイモンド・ローウィに影響したことは確かで、
雲ひとつない空に翼を広げるあのハトを世に送り出すに至ったのでしょう。
ま、不二家の花とかシェル石油の貝とか、のっぺりした絵が多い人なんですけどね。

ちなみに…って、余談ばっかで申し訳ないんですけれども
このときのデザイン料が怒涛の150万円だったというのは有名なお話。
当時の初任給が6000円とか7000円とかいう時代ですから払うほうは真っ青ですよ。
ま、なんといってもピーカンだしね。…って、言っちゃった。(汗)

結論として、ハトが平和の象徴になったのが第二次大戦以降の話である上に
あのピクトグラムのような構図に至ってはエジプトの壁画かローウィか
くらいの勢いなので、書けば書くほどナニでアレな感じになってしまうのですが
ハトが何気なく巻紙くわえちゃってるセンスは嫌いじゃないんで
皆様にはひとつよろしくお願いしたい次第である今日この頃なんですよ。
…とかって、何のフォローにもなってないんですけど。(汗)

関連商品:peace

■■■ 補足 ■■■
   子供のころから周りにクリスチャンが多かったり思想史の授業は結構取ってたので
   基礎知識は比較的あるほうだと思いますが専門家ではないので誤認識はあるかも。
   おかしな点があったらご指摘ください。


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