東北の紙は買えるか

武田邦彦氏のエッセイを読んで

久~しぶりに更新するついでに、東北の巻紙にリンクでも張ろう思い
ネットをうろうろしているうちに
環境問題の論者である中部大学の武田邦彦氏のエッセイを見つけました。

東北のノート、トイレットペーパー、CDは買えるか?

詳細な内容は各自で原典にあたって頂くとして、
個人的には「なんかちょっとね…」…っていうキモチ。

Who's bad?

非常にデリケートな問題なので、改めて確認しておきます。

本稿の主題は福島第一原発の震災事故後における
東北産トイレットペーパーの購買可否について
…です。

以下の内容は例によってまきコレの独自見解です。
理学部(一応レベルだけど放射線を利用した機械をメインに使ってた。
とはいえ放射線取扱者になる義務が発生しない程度の装置だけど)
卒で
東北在住歴があり、巻紙好きであるまきコレ中の人が
誰に頼まれたのでもなく書いた文章であることを掲げておきます。
前提をご理解の上、冷静な対応をお願いします。

くだんの文章を検証する前に、震災関連で声を大にして言いたいのは
政府の想像力不足・専門家との連携不足・行動決定力不足に尽きるということ。
(絆がどうこう言う割に事後声が小さくなった野党も思い当たる節がある筈だ)

ついでに言えばマスコミの科学理解レベルの低さが問題を増長させている。
(中学必修レベルの内容を引いて「専門家が煙に巻いている」
 みたいな発言をするのはお里が知れるのでいい加減やめて頂きたい。
 たとえそうだとしても静かに丁寧に解説を重ねるのが筋でしょう。
 読者を、視聴者を、彼らは一体どうしたいのか。
 池上彰さんのブームから学ぶものはなかったんですかね?)

すべてがまともに機能していれば、
こんな議論は本来しなくて済むようなお話なんです。

くそ…。

本論

人が書いたものを勝手に要約するのは気が引けるのですが、
リンク先のエッセイが問うものは
汚染が疑われる全ての流通商品に汚染度検査を課すべし。
その結果 低線量であれば流通可能であるし
消費者もそれを指標に購買選択権を得られる。
…です。(よね?重要な言葉を唐突に使うので扇情的に見えます。)

まぁ、その点において異論はありません。
実際うちでは線量測定済の福島県産米やら被災県のショップから
継続的に農産品買ってるんで。

余談ですが、うちは震災前から東北のものをよく通販してたんですけど
お店からの感謝のメッセージが日を追うごとにすごい分量になってきて
非常にやりきれません。それだけ売り上げ落ちてるってこと?
まぁ、避けてる人に買えって強要する筋合いもないけどね。


ただ、多くの人が今後の生活スタイルの見直しを迫られる中で
なぜ被爆のやり玉としてノート・巻紙・CDを挙げたのか
全く理解の及ばぬところだという話です。

氏が3つを選んだ論拠がわからなかったので以下憶測。
前項2つは、三陸エリアの特殊紙工場が被災したのを受けて
震災直後に雑誌の供給が滞ったことが念頭にあったのでしょうか。

確かに光沢紙など東北をキーエリアに生産されてる紙はありますが
一般的に見て製紙地帯は静岡・愛媛・岐阜を筆頭に西日本に集中しています。
(小学校で習いましたよね?この傾向は昔から変わってません。)
ちなみにキャンパスノートのコクヨは自社工場が岐阜ですし
ジャポニカ学習帳のショウワノートは富山です。

放射性物質が徐々に拡散されているとしても
そもそも東北はノートの産地ではないはずです。

次、トイレットペーパーの話。
前述の通り、製紙地帯は静岡と愛媛と岐阜に集中しています。
トイレットペーパーの生産地もほぼこれと合致します。

これは元々製造に必要な木材と水の利を求めてのことですが、
当然地の利も働いており、結果として現在でも
東京・近畿・名古屋の三大商圏をカバーする形で機能しています。
東北に工場を持つ大手メーカーであっても、そこで巻紙を作ってる
という話は聞きません。(段ボールなどを作ってるため本論では扱いません。)

とはいえ、東北で巻紙を作っている会社はあります。

しかしながら地場メーカーの巻紙は、その多くが地産地消されており
大きな商圏を超えてよその地域に流出することはまれです。
だからこそ巻紙好きは旅行に出かけるたびに観光そっちのけで
便所巡りをする羽目になるわけです。(いや、ちゃんと遊んでるけどさ。)

しかも、回収古紙からリサイクルされる巻紙に至っては
供給地は明らかに大都市圏であり地方都市は原料を買う側です。
これは製造業にとって不利な条件以外の何物でもありません。
ただでさえ小規模な地方の家庭紙メーカーは景気や古紙相場の変動で
櫛の歯を削るように廃業が進んでいるのです。

東北以外にお住まいの方で、東北の会社が作った巻紙が職場や学校にある、
近所に売ってる、という方、どれだけいらっしゃるでしょうか?
選択的に避けなくても、遭遇することなどほぼありません。
遠隔地居住者が巻紙を取り沙汰する意味が分からない。

ついでにCDの話。
CDなんて、昨今みんなダウンロードでパッケージ買わないもんだから
どんどん台湾あたりのプレス工場にシフトしていってます。
それだけ値段が違うのです。ぐぐれば1分で解ることです。
昨今プレス頼む時に国内工場にするか海外にするか聞かれるなんて当たり前。
その分、付帯する手間などが変わってきますが。

実際問題として国内にもプレス工場はありますし
立地も仙台や茨城だったりするわけですが、
数百枚単位でCD持ってるワタクシのような人間さえも
去年一年で5枚くらいしかCDやDVDを買わなくなってるわけで、
なにをか況んやっていう。
皆さん、そんなに健康を害するほど音楽ソフト買ってるんでしょうか?
(おっとこれは扇情的な展開でしたね)

そもそもコンテンツ商品は生産地を選べる類いの品ではありませんし
どうしても気になる方はそれこそダウンロード購入したらよろしいよね。
ほら、ことさらに騒ぎ立てなくても選択肢は既に用意されている。

第一、これらの具体例は全て屋内で製造される商品であって
製造・流通過程で野ざらしにされる性格の商品ではないのです。
工場の気密性も業種によってまちまちです。
生活に根ざしてはいるものの内服するわけでもなければ
一日中触れているような類の製品でもありません。
社会に問題提起したいならもっと急を要する例を出せば良い。

特に紙について言えば、工場で加工される期間より
野外で材として生育している期間の方がはるかに長いでしょう。
しかもパルプの輸入率は7割を超えます。
そして古紙を原料としている場合、話はさらに複雑化します。
つまり氏の言う「東北の紙」はここで定義されていないのです。

問題の発端は確かに政府にありますが、
この表現が必要以上に誤解を招いていることは明白です。

ワタシはこの話を書きながら、
他県産米を福島で精米して他県産米として売ったらクレームが来た
…というワイドショーネタを思い出しました。

氏の、定められた基準に従い運用しろという話は賛成しますが
挙げられた具体例に限って言えばもはやデマレベル。
こういう、誰の得にもならない齟齬はつまらないし本当に不幸なことです。

結論

冒頭の東北のトイレットペーパーが買えるか云々について。
買えません

ただし、それは放射性物質とは関係なく
東北以外の地域にはほとんど流通してない
(少なくとも巻紙を20年探し歩いてるワタシが
東北の外で東北の巻紙を見たのは2~3回程度な)ので
東北以外の地域で暮らす人の目に触れる機会はないだろうという意味です。
欲しい方は右カラムの巻紙が岩手の会社のです。

 逆説的にご迷惑をかけるといけないので書いておきますが 東北に土地勘のない方、
 今一度 地図にコンパス当てて等距離線上にどんな街があるか確認されるのをお勧めします。
 そういや東北に住んでた頃、東京のテレビ局から取材受けた時に
 「東北って意外と来るの簡単なんですね~。」って言われましたっけ。
 この発言は結構根深く、色々なことを物語っているように思います。
 ま、だからなんだって言うか、結局そういうことなんですけど。


なお、被災地域の方による地元製品の購買是非については
実際の測定を待つほかありません。
ですが、その結果 かの地の製品が安全であると保証され
滞りなく流通することを願ってやみません。


最後に、本文は氏の言葉尻だけをあげつらうのが目的ではないことも
記しておきます。

この件で言えば被災地の特産ではない商品を危険だと思わせる記述
(「線量測定していない以上は」という前書きがついているものの
 かなりの率で早合点を招く表現)
…をしたことは「有識者」として如何な物かと思うのが一つ。

逆に、これらの製品が東北でさほど生産されてないことを知っていて
例示したのだとすればケッコウなことですが
結果的に「実際に製造している数少ない会社」が特定されているとも
言えるわけで、こちらの方が影響は甚大です。

氏は各所のガイドラインの策定に呼ばれるなど
ご自身の持つ影響力を多分に認めておいでです。
また、庶民的な感覚が人気で講演などなさっているわけですから
明快な根拠をもとに(それはすなわち情報の正確性に繋がるので)
揺るぎない発言をして頂きたいものだ、というお話です。

各位、まともな論理を展開しているご意見には真摯に対応いたします。

■■■ 参考資料 ■■■
古紙ジャーナル
日本製紙連合会

■■■ 追記 2012-04-05 ■■■
氏の著述にはレジ袋問題とかペットボトル問題とか割り箸問題とか
書きたいことが山ほどあるんですが、あんま紙とは関係ないのでここでは割愛。

ただ「自宅で大麻育ててるだけの若者が逮捕されるのおかしいでしょ。」
みたいな発言してる人に「法治国家」なんて表現を持ち出されてもね。
(大麻の依存性についてはあちこちで議論されてるのでここでは言及しません。
 あくまで日本の法律下における大麻とのかかわり方って話。)

大麻には麻薬成分(テトラヒドロカンナビノール)が取れるカナビス(cannabis)と
繊維を取るヘンプ(hemp)で栽培品種が違います。
ヘンプは将来性のある植物として注目する人もいる分野なので
真剣に育てたいのなら取り扱ってる研究所に所属したり、
実際育ててる農家に弟子入りしたりして堂々と関わればよろしい。
理念があって農地があって(かつ運が良ければ)栽培免許も貰えるわけですし。
(逆に言うとそこまでしないと育てられない植物でもあるのですが
 やはり種々の問題があるので、多少の覚悟は必要でしょうね。)

しかも、嗜好目的の場合は横張りさせて枝数を増やしたほうが良く、
繊維目的の場合はなるべく縦に伸ばしたいので、「紙を梳いてみたかった」
などという陳腐な嘘は一目でばれるのです。

実際、押収された大麻はカナビスかヘンプかの鑑定がされて
無事(?)検察に起訴されるわけですから
これをして騒ぎ立てるのって…さぁ。


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